紙と写真

しばらく記事を書けていなかった。

というのは確定申告とか、病院とか、次の原稿とか、色々バタバタしていたから。気持ちを落ち着かせるために日記を書いているけど、もはや日記を書くことでは落ち着けられないレベルで気持ちがタスクに圧迫されていた。実際のところはずっと時間があったのに。

原稿…この間脱稿したばかりでは?という感じですが、本当にそうで、この2〜3年間、原稿をしていなかった期間がほとんどない。原稿が終わって、イベントの準備に追われて、イベントが終わって放心状態になり、そしてまた次の原稿(テラ)へ…というノンストップマラソンだったので、もはや原稿のない時に何をしたらいいか分からない。

原稿の合間に、どうしても見たい展示や映画などを、数時間単位で捻出してなんとか向かうという日々だった。

 

紙で何か作るのは楽しい。装丁の話をするとき、とてもワクワクしているということに最近改めて気付いた。

紙に触れた時の触感、日の光の当たる角度によって変わる色や表情など、それはやっぱり紙ならではだと思う。電子書籍と紙の書籍にはそれぞれデメリットがあって、やりやすいこと、怖いこと、便利なこと、色々とあるけれど、インクが紙に載るということや紙の組み合わせから生まれるいろいろなものが私は多分かなり好き。

 

今まで、写真集もイベントの時にいくつか作ってきて、しかし旅行に行かない期間が長くなるほどに写真のストックも減ってきて(私は遠出する時以外はそんなに写真を撮らない)、特に新しい写真集を作りたいという気持ちが薄らいでいた。

だけど紙や装丁のことをあれこれ友人と話しているうちに、今までの写真も含めて白黒で刷り直したらどんな感じだろう?インクの載り方や全体の雰囲気はどう変わるだろう?それも、大好きな紙に刷って、大好きな綴じ方で…。と思ったら途端にワクワクしてきた。

思いついてから、ハトロン紙(片艶クラフト紙)を注文するまでは本当に早かった。(ついでに発送→到着までもとても早かった)届いた紙に、自宅のモノクロレーザープリンタで写真を刷ってみたら、かなり…いい感じだった。ハトロン紙は裏表で紙質が違い、ざらざらした面とつるつるした面の二面性を持つ。裏と表両方に刷ってみたら、刷り上がりの感じが全然違う。

 

写真を撮り始めた頃から今まで、なんとなく、「色」がすごく大事だと思っていた。こういった色の組み合わせはこんなに素敵なんだということを、露出やシャッタースピードや絞りの偶然により気付かされる、それが面白いと思っていた。単純にきれいな色のものを見るのも好きだった。

でも同時に白黒写真への憧れはすごくあって、色の美しさという面(これを武器の一つだと思っている)を持ち得ない白黒で魅せられるというのはとても強くてかっこいいと思っていた。

私が今回試し刷りしたのは元々カラーだった写真を白黒に加工したものなのでその点紛いものみたいに感じているところはある。いつか、白黒フィルムをちゃんとカメラに装填して(カラー写真と白黒写真はそもそもフィルムの種類が違う)自分をワクワクさせられるような写真を撮ってみたい。

 

自宅クオリティではあるけれど、なんとか漫画を早めに仕上げて、数冊でもいいからこの写真集を作ってイベントに持参できたらなと思う。そう思うと漫画の筆も気合が入ってくる。

イベントが終わるたびに、「これからはしばらくは本作りは休んで映画を見たり本を読んだり、好きなことをしよう…」と思うのに、好きなことが本作りだから、結局原稿や本作りにコマを進めてしまうのであった。つまり、幸せ。