好きな本

前に書いた積ん読の記事を読んでくださった方から、コメントを頂きました。

「私の好きな本」を紹介して欲しい…という…大変身に余るご質問で…私なんかで良ければ紹介させてください。

 

・『幽霊たち』ポール・オースター著、柴田元幸訳、新潮文庫

好きな本と考えて最初に浮かんだのがこれでした。

大学のゼミの課題図書で読んだのですが、まずタイトルからものすごく惹かれた。私は「幽霊」をモチーフとしたテーマに弱いんです。ここで言う「幽霊」は「お化け」の意味でなく…そこにいないのにいるものというか…存在の不確かなものの象徴というか…

始まり方はミステリー小説のようで、ホワイトという人物がブルーという人物にブラックという人物を見張るよう依頼し、物語がスタートします。ブルーがブラックを見張った記録を書き留めていくうちに、話は思いもよらぬ方向へ…。

個人的には一行目から好き!あと登場人物の名前は全て色の名前で、そこになんの意味があるのか…という点も気になり、読み進める手が止まらなかった本です。

メタ構造、アイデンティティ(自己とは?)なんかにピンと来る人にはまずおすすめしたいのですが、普通にミステリー小説としても面白いです。あと薄いので読みやすい。

ポール・オースター、日本だと村上春樹みたいな立ち位置なのかと思ってるんですけど…違うのかな…すごく都会的だよなと思って読んでる…どちらも数冊しか読んだことありませんが…

 

・『キッチン』吉本ばなな、角川文庫

これは〜…もう、好きで好きで中学生のころ何度も読んだけどすっごく久しぶりに手に取りました。

当時、男女が二人でてきて分かりやすく恋に落ちない(恋に似た感情はあったのかもしれないけど)作品を読んだことがほとんどなくて、まずそこが凄く好きになりました。主人公のみかげが人々を見る目線が大好きだった。ちぐはぐで楽しい3人の同居生活や突拍子もない楽しい出来事とそれを受け入れる人たちの眼差しが本当に大好きで、そのあたたかさに触れたくて何度も読んだ。

キッチンで眠るシーンも脳内で一枚の絵になって、しまってあります。料理教室のお嬢さんたちや、あとタクシーのおっちゃんもいい…。みんな好き。昔の恋人も、この作品における稀有というか…いい意味でもよくないい意味でも珍しく人間らしい感情の人で、(あんまり描かれないけど)嫌いじゃない。彼女の台詞も覚えてる。

同時収録の『ムーンライト・シャドウ』もものすごくいいです。あまりにもよかった思い出だけあって、もう十年近く読んでないから、細かい所は記憶があやふや…ファンタジーだったよね。1冊の中に『キッチン』『満月』と来て『ムーンライト・シャドウ』までこんな素晴らしい話だなんて、こんなことがあっていいのか!?と多幸感ではちきれそう(お話自体はどれもどこか切なくて静かなので、作品自体の多幸感ではなく、作品たちの素晴らしさのオンパレードに対して)になった思い出です。

去年映画になりましたね。観てないのですが、観てみようかな…その前に読み返そう。

 

・『旅行者の朝食米原万里、文春文庫

いつも私に美しいものや興味深い作品を教えてくれる友人が勧めてくれた本です。前の記事で積ん読として載せた食卓歓談集を勧めてくれたのも、パパイオアヌーの舞台を教えてくれたのも、この人だった…。

ロシア語通訳をされていた米原万里さんのエッセイ集です。「旅行者の朝食」なので旅の朝ごはんがメインテーマと思いきや、全然違う。じゃあ「旅行者の朝食」って何?というのは読んでからのお楽しみです。ただ食べ物にまつわる本ではあります。淡々とした中にユーモアが織り交ぜられた文章、とても読みやすい。この本が面白かったので、米原さんの別の著書『ロシアはいつも荒れ模様』も読みました。

ロシア語通訳の方なのでもちろんロシアの話が多いのですが、そのうち、酒の話の多いこと多いこと…。後者の本では半分近くがロシアの飲酒にまつわるエピソードで、その多さにも笑ってしまった。ロシアに関するエッセイは読んだことがなかったので新鮮で、度肝の抜く話の多さにまた笑いました。私たちの当たり前は当たり前じゃない。

 

・『夜間飛行』長野まゆみ河出文庫

好きな本を上げるにあたって、気を抜くとどうしても長野まゆみの本だらけになってしまうので苦渋の思いで一冊を選びました。これも…タイトルでもうノックアウト。(しかし…サン=テグジュペリの方は…み、未読……)

この本、好きすぎておそらく誰かに貸したか引越しの時に失くしたかで行方不明になってしまい、今手元で色々確認できないので記憶とインターネット上のレビューを見ながら思い出しつつで書いています。とりあえず旅の話で、二人の少年ミシエルとプラチナが突然現れた檸檬色の潜水艇に乗って夜の旅をする話です。私の特に好きな、初期の長野作品のエッセンス(鉱石、天体、きっと存在しないであろうとても美味しそうな食べ物や飲み物、独特のルビの振り方)がふんだんに詰まっていて、たまらない…

ファンタジーさでいっぱいですが、裏には大人の苦味だったりとか恐ろしいものも隠されていたりして、そこも長野作品の好きなところです。長野作品の少年たちは大人を毛嫌いしている子が多くて、だけど自分がいつかそうなってしまうことを分かっているから焦りと儚さと今を楽しみたい思い切りの良さと、様々な感情が渦巻いていて、切なくて、かわいい。

文章がとにかく特徴的なので、合うか合わないかは人による気がします…。私はガッツリ思春期の頃に「出会って」しまったので、もはや原風景のような存在です。

 

・『世界の市場』松岡絵里著、吉田友和写真、国書刊行会

一冊だけ、文学ではない本を挙げるとしたらこれ…。会社の本棚にあって、とても気に入ったので自分でも買った。タイトル通り世界の市場についてたくさん紹介している本です。市場の網羅ぶりがすごい。

初めて海外旅行に行った時から欠かさず市場に行くくらいには市場が好きなんですが、この本を読むと市場の多種多様さというか…自分が見ていた市場というものは本当にごく一部のものだったんだなと感じる。「このようなもの専門の市場があるの!?」や「こんな売り方ある!?」などなど…。

この本のエピソードの中では、ジンバブエの市場の話が好きでよく覚えています。

 

 

とりあえず5冊…と思って選んだんですが、5冊目とても難儀した…。

乱歩の『孤島の鬼』、シャーロック・ホームズの『バスカヴィル家の犬』、宮沢賢治の『春と修羅』『銀河鉄道の夜』…あと人格形成に関わったであろうさくらももこのエッセイどれか…。どれも有名ですが大好きなので…。上にあげた本たちも、読んでいたのがかなり前のものが多くて結構うろ覚えです。元々本を読むのは嫌いじゃないけど「習慣」としては全く根付いてなくて、突然スイッチが入って読み出す感じです。

長野まゆみは本当に選ぶのが大変だったので(本棚の文庫本の半分が長野まゆみ)ほかだと『天体議会〈プラネット・ブルー〉』『賢治先生』『夏至南風』『上海少年(の中の表題作と『幕間』がかなりドラマチックで好き)』『宇宙百貨活劇〈ペンシル・ロケット・オペラ〉(の中のエッセイである『ことばのブリキ罐』で、長野先生がどうやって言葉を選んでるか、少年の名前の付け方など分かってすごく面白いです)』とか…凛一シリーズも勿論(?)好きなのでキリがない。初期作品ほとんど好きだし…。

 

最近は本は勧められて読むことが多いです。信頼できる人に勧められるとすぐ読んじゃう、し、ほとんどハズレがない(こういう言い方はよくないかもですが)のがすごい。

あとは言語関係の本を図書館でパラパラめくって面白そうなものを借りてきて読んだり…最近ハングルの成り立ちや昔の朝鮮語のことが知りたくて、おすすめの本があったら教えて欲しいです。